歴史的建造物 遺す
煉瓦を守る
日本における煉瓦造建築物建設の最初期は江戸時代末であり、煉瓦造は関東大震災で甚大な被害が生じる約半世紀の間、我が国の主要な建築構法でした。その間にも幾多の地震とその被害から、耐震化の取組みがなされてはいたものの、その耐震性能は今日の耐震基準に満たないものです。このため、文化財を含む歴史的建造物の保存においては、人命と文化財保護の両面から、耐震診断による耐震性の評価がなされ、耐震性の不足する建物は耐震補強が必要となります。
この耐震補強工事では、文化財を守るため極力建物当初の形態と意匠・構法・材料などを維持する必要があります。また、長期間経過している外部の煉瓦壁面は劣化による破損を伴っており、文化財修復の理念に沿った煉瓦補修が必要です。当社で手掛ける工事の中には、地震被害で大破損した補修や一般的な工法では不可能な補強工事など、制約の多い条件で施工が求められる事があり、困難な場面での施工で培った経験とノウハウがあります。ここではそれらを生かした取り組みについて紹介します。
アラミドロッド挿入目地置換補強工法(B-Star工法)
アラミドロッド挿入目地置換補強工法は、既存の煉瓦造建築物の目地に高強度・高耐久性のアラミドロッドを埋め込み、目地の一部を補強目地材で置換することによって、外観を変えることなく、煉瓦壁の面外曲げ強度および靭性を高める工法です。
アラミドロッドを用いたひび割れ補修
ひび割れに沿って煉瓦目地にアラミドロッドを挿入し、ひび割れの進展や再発を防ぐ補修工法です。既存の煉瓦目地を切削し、アラミドロッドを挿入して高強度の目地モルタルで埋め戻しを行います。煉瓦目地内部に補強材のアラミドロッドを埋め込むため、煉瓦自体を傷つけずに補修を行うことが可能です。
煉瓦の積替え
この煉瓦造は2011年東日本大震災および2021年福島県沖地震において被災し、外壁煉瓦面に大きな亀裂が発生していました。煉瓦の積替えにおいては、当初煉瓦の色調と寸法に合わせ本工事のために調達した煉瓦を使用しました。
PC鋼棒による煉瓦壁体の補強
煉瓦造倉庫の改修整備工事において、高さ9mの煉瓦壁内に挿入したPC 鋼棒にプレストレスを与え、隙間にグラウト材を注入して耐震性を向上させる補強工法です。